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セラフィック・ブリーズ 第十三話・偽りの学問

ファイ「物理学って知ってる?」
ファイは二人にたずねた。
コレキヨ「物理学?そりゃ知ってるけど、大昔に廃れたよね。」
リチャード「ああ。まだ、魔法学で解明されていないことが、
    たくさんあった時代の学問だな。」
ファイ「そう。その物理学。魔法学で大抵のことが解明できるようになってからは、
    誰も見向きもしないよね。でも、大抵のことがわかるってことは、
    全部がわかるってわけじゃないってことの裏返しだよね。」

まだ、魔法学が発達していなかったころの話。
その当時にもすでに魔法は日常生活で利用されてはいたが、
魔法発動の原理や魔力の種類など、まだまだ研究の余地があった。
その中で、魔法学だけでは説明のできない現象を説明するために存在した学問、
それが物理学である。
いわば、魔法学と双対をなす学問であり、
魔法学で説明できるものは物理学では説明できず、
物理学で説明できるものは魔法学では説明できないという立場であった。
しかし、魔法学が発達するにつれて、
それまで物理学で説明してきたものが、魔法学で説明できるようになり、
物理学は「偽りの学問」として廃れてしまった。

コレキヨ「じゃあ、そのわかっていない部分…つまり今回の件とかは、
    物理学で説明できるんじゃないかってこと?」
ファイ「それが、ちょっとちがうのよね。」
リチャード「どういうことだ?」
リチャードはあまり表情を変えずにファイに訊く。
一方コレキヨはあっけに取られた表情をした。
ファイ「それがね、実は魔法学と物理学って重なる部分があるんじゃないかと。
    むしろ、同じものなんじゃないかって考えてるのね。」
コレキヨはさらに不可思議な顔をする。
さすがのリチャードも少しだけ表情を変えた。

ファイ「つまり、両方とも同じものを違う方向から見てるだけってことね。」
リチャード「なるほど。そういうことか。」
リチャードは、ファイの話に納得したようだ。
しかし、コレキヨはまだ納得していない。
コレキヨ「でも、それで同じものを見ると、片方でしか解明できないんじゃないの?」
リチャード「うむ、現状ではそのとおりだ。ただ、解明できないとすれば、
    それは理論が間違えているのではなく、導く方法が間違えているということになる。
    ということだな?ファイ。」
ファイ「そう。そのとおり。導く方法ってとこが、
    その学問がどれだけ発達してるかどうかなのね。」
この説明でコレキヨも納得したようだ。
コレキヨ「は〜。なるほどね。つまり、魔法学も物理学も、
    両方とも発達すれば、どちらもすべてを解明できるかもしれないってことか。」

ファイ「そう。そういうこと。で、話を戻すけど、
    今回の件は、今の魔法学じゃわからない。なら、物理学で解いてみたら?
    もしかしたらそれでわかるかもしれない。」
コレキヨ「おお。いい考えだね。ぜひやってみようよ。」
コレキヨがおどけた格好で言った。
リチャード「いや、しかし物理学なんて大学にも専門家はいないぞ。
    大昔の文献を読むしかない。」
リチャードがもっともな意見を言った。
コレキヨ「あ、そうか。しかも、発達している魔法学で説明できないものが、
    廃れた物理学で説明できるのかも疑問だよね。」

ファイはにっこり笑って言う。
ファイ「その点は心配無いよ。あたしが世界で唯一物理学の専門家だから。」
コレキヨ「まじ?よくまあそんなマイナーな学問を。」
リチャード「ファイらしいといえばらしいがな。」
ファイ「それと、廃れたとは言うけど、魔法学と同じものと考えれば、
    物理学を今の魔法学のレベルまで持っていくのは簡単なことだったよ。」
リチャード「…それで、魔集石か。」
コレキヨ「え?リチャード、魔集石を知ってるの?」
ファイ「あたしがレシピを持ち込んでリチャードに作ってもらったの。」
リチャード「あの時は、すごい発想をすると思ったが、
    なるほど、物理学の考え方だったわけだ。」

ファイ「じゃあとにかく、物理学的に検証してみるね。」
コレキヨ「頼むよ。物理じゃ他の人には何もできないから。」
ファイ「それじゃね。」
そう言って、ファイは病院を後にし、
今日もまた図書館へと向かっていった。

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