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セラフィック・ブリーズ 第十二話・見当と検討

次の日の朝、今日も図書館へ出かけようと支度をしていたファイの部屋に、
髪の毛がボサボサでヨレヨレの白衣を着たコレキヨが訪ねてきた。
コレキヨ「おはよう、ファイ。」
ファイ「うわ!なにその格好。ただでさえ怪しいのに余計怪しいわよ。」
コレキヨ「うるさいなぁ。寝てないんだよ。言うなら代わってくれよ〜。」
ファイ「嫌に決まってるじゃん。…で、どうしたの?」

コレキヨ「いや、そっちの調子はどう?」
ファイ「ん〜。やっぱ現地に行かないとわからないよ。
    まぁ、ある程度の推測はできるけどね。」
コレキヨ「ふ〜ん。でさ、その辺りをリチャードが知りたがってるんだけど。」
ファイ「あ、ちょうど良かった。あたしも聞きたいことあるのよね。」

リチャードの病室の前には、面会謝絶の札がかかっていた。
と言っても、命に別状はなく、二次感染的なものを防ぐのが目的のようだ。
ファイ「うにゃ、リチャード。元気してた?」
リチャード「元気なわけないだろ。まぁ、だいぶよくなったがな。」
横になっていたリチャードは、ベッドの上で体を起こしながらそう言った。
ファイ「で、どの辺から聞きたい?」
リチャード「ファイの推測を聞きたい。」
ファイ「そうね。じゃあ今まで考えたことを全部まとめる形で教えるか。」

ファイはベッド横の椅子に座ると、ポケットから手帳とペンを取り出し、
何やら書きながら説明をはじめた。
コレキヨはファイの横に座りそれを覗きこんでいる。
ファイ「まず、生物的な原因。あきらかにこれはないわね。」
ファイは手帳に書いた『ウィルス』と言う文字の上にバツ印をつける。
ファイ「ウィルスとかが原因なら、昔のあの事件のときにもわかっていたはずだし、
    少なくとも今回は、リチャードから既知のウィルス感染の症状は出ていなかったし。」
コレキヨ「僕もそれは賛成。ウィルスだったら今ごろ僕も寝込んでるはずだし。」
リチャード「うむ。次は?」
ファイ「待って。さっき『生物的な』と言ったのには意味があるの。
    ウィルス以外の生物的な要因。つまりは、野獣の線もないってことね。
    野獣に襲われたなら外傷になるからね。」
ファイは『やじう』と言う文字にもバツ印をつけた。
リチャード「もちろん。野獣に襲われたなら私だってわかる。」
ファイ「うん。じゃあ次ね。」

ファイ「次は、リチャード達が原因ではないかと言うところ。
    まずは、前兆の現れにくい脳梗塞とかになったとかそういうこと。
    これも、間違いなくありえないよね。」
コレキヨ「まぁね。一人ならともかく三人同時になるのはすごい確率だもん。」
ファイ「三人同時にと言うことになれば、考えられるのは集団ヒステリーかな?
    でも、まがりなりにも王立大学の博士とその教え子が集団ヒステリーなんてねぇ。」
ファイはおどけた目でリチャードを見た。
リチャード「その点は記憶がないから何とも言えないが、
    特に危険な実験をやっていたわけではないからな。
    単なる岩石の採集で集団ヒステリーになることは普通ないだろう。」
ファイ「ってことで、これも消えた〜。」
ファイはさっきよりも大きなバツ印を手帳に付けた。

ファイ「はい。じゃあ次は、化学的な要因を考えてみよう。
    …って、これに関してはリチャードに聞かなきゃあたしにはわかんないんだ。」
コレキヨ「ああ、つまりなんか薬品を使ったかって事でしょ?」
リチャード「うむ。さっきも言ったが、作業のほとんどは採集だからな。
    確かに、古宿の方では分析実験も行っていたが、そのときは薬品を使っていない。
    そもそも、王都を発つときから船に実験用の薬品は積んでいなかったからな。」
ファイ「それはあたしにもわかるよ。聞きたいのはそこじゃなくてね、
    持って行った薬を全部教えてほしいんだ。軟膏とか飲み薬とか全部。」
コレキヨとリチャードはハッとした表情をした。
同じ薬品でも、二人にはそこまでは思いつかなかったのだろう。
コレキヨ「なるほどね。それらの薬と、
    鉱山周辺のなんかの成分が化学変化を起こしたかもしれないってことか。」
ファイ「そーそー。これは結構ありえるでしょ?
    地下に溜まった無害なガスと、無害な薬が反応して有害なガスになるとか。」
リチャード「そうだな。所持していた薬は…。」
リチャードはそう言うと、ファイの手帳を借りて、薬の商品名とその薬の詳細な成分名を書いた。
リチャード「これで全部だ。間違いない。」
ファイ「ふ〜ん。じゃあこれはまた今度調べなきゃ。
    ってわけで、これはひとまずおいといて、次に考えられることね。」
ファイは、今度は手帳に丸印をつけ、ページをめくって、また新しい項目を書き始めた。

ファイ「ん〜。じゃあ魔力の線を考えてみよう。」
コレキヨ「うん。その可能性が一番高いだろうね。」
コレキヨが確信を持ったような態度で言う。
しかしそこへリチャードが口を挟んだ。
リチャード「まてよ。それはないと思うぞ。」
コレキヨ「え?なんで?」
コレキヨはあっけにとられた顔で聞き返す。
リチャード「ああいう採取作業では、万が一のことを考えて結界を張るからな。」
ファイ「あー。魔物除けね。確かに魔力も防げるわ。」
魔物除けとはつまり魔除の魔留石のことだ。
コレキヨ「え?魔力も防げるの?モンスターだけじゃなく?」
ファイ「結構知られてないけどね。もともとは魔力を防ぐものなんだよね。」
コレキヨ「じゃあ、魔力の線もないのかあ。ってことは、他にないじゃん?」
コレキヨは難しい顔をした。

ファイはそんなコレキヨをみて微笑みながら言う。
ファイ「それがね、まだ他にあるのよ。」

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