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セラフィック・ブリーズ 第十話・手遅れ リリーたちは予定通り、昼過ぎにフロントコーストへ到着した。 町外れの診療所で処置をされているという情報はすでに知っていたため、 飛空艇から駆け出すように降り、町外れの方へ走り出した。 息を切らしながらようやく診療所にたどり着いた。 しかし、どこか様子が変わっている。というのは、人がいる気配がないのだ。 ドアをノックしてみるが、やはり反応はない。 リリーは不安になった。情報が間違えていたのではないかとか、 まさかすでに全員死んでしまったのではないかなどと、 さまざまな想像が頭の中をぐるぐる回って涙が滲んできた。 ただ、ここで泣いていてもしょうがないので、 とりあえず飛空艇に戻ることにした。 空港の入り口まで戻ると、飛空艇の周りで数名が話し合っている。 その中には、飛空艇の乗務員とは違う人の姿も見える。 リリーはすぐに、その人たちの正体に気がついた。 きっと、捜索隊の隊員であろう。 ということは、リチャードたちのことを何か知っているに違いない。 リリーは小走りにかけよって、やにわにたずねた。 リリー「あのぅ。捜索隊の方ですよね?」 隊員「え?ええ、そうですが。あなたは?」 リリー「あ、調査隊のフィオレンティーナと申します。 リチャード博士たちはどうなさったのですか?」 隊員「ああ、王立大学の方ですね。お話はこちらの方々にうかがいました。 それが、つい先ほど…30分ほど前ですか、医療隊が到着しまして、 クラウデリアの病院へ搬送されていきました。」 リリー「…そ、そうですか。えっと、容態はどうでした?」 隊員「詳しくはわかりませんが、安定したということですよ。」 本当はクラウデリアまで追いかけたいが、さすがにそこまではできないので、 とりあえず、容態が安定したという情報を信じ、 リリーは、カラコム鉱山へ戻ることにした。 クラウデリアは世界随一の貿易都市である。 物流だけではなく、情報の流通においても世界の中心地だ。 そのため、あらゆる設備が整った大きな病院も多数ある。 ファイとコレキヨはそれぞれ別の理由で医療隊に同行してきた。 コレキヨは、これまでの三人への処置を病院に説明する必要があり、 ついでに最新の医療情報を入手しようという目論見もあった。 ファイは情報を収集するためについてきた。 王立図書館をはじめ、各種マスメディア企業、 果ては場末の酒場にまで貴重な情報が集まる街である。 カラコム鉱山に何があるのか、その手がかりだけでもわかるかもしれない。 ファイは、まず王立図書館から調べようと思ったが、 もう図書館が閉まっている時間だし、 もし開いているとしても1日2日で調べられるような量ではないため、 明日からじっくり調べることにして、 今日は宿を確保して休むことにした。 一方コレキヨは、これから徹夜で三人の精密検査に入る。 説明を終えたら戻るつもりだったのが、原因が未知ということで、 これまで処置を行ってきたコレキヨの手伝いが必要らしい。 ファイが明日から「ゆっくり」作業をはじめるということを聞いて、 ゆとりがモットーのコレキヨは、とてもうらやましく思った。 読み物コーナーへ |