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セラフィック・ブリーズ 第九話・公私混同

リチャードは、ゆっくりとノートをめくる。やはり、文字を読むのも辛そうだ。
とはいえ、ほんの十数ページであるから、ほんの5分程度で読み終えてしまった。
ファイ「どう?なんか思い出した?」
リチャード「ああ、ひとつだけ思い出した。いや、すべてと言うべきか。」
コレキヨ「え?なになに?」
リチャード「それは…何一つわからないということだ。」

ファイ「………。」
コレキヨ「………ねぇ、ファイ。」
ファイ「言わないで。わかってるから。」
リチャード「ん?どうしたのだ。」
ファイ「ん?あはははは。…はぁ。」
コレキヨ「いや、いつもながら知的な冗談だなぁって。」
学者に限らず、その道の一人者と呼ばれる人は、
その分野以外の才能が皆無ということが多々あるが、リチャードもその一人のようだ。

とりあえず用もすんだので、休ませるために二人は病室を後にした。
コレキヨ「結局わからないかぁ。」
ファイ「まぁね。一番詳しいはずのリチャードにわからないんだから。」
コレキヨ「これからどうする?」
ファイ「ん〜、とりあえず、今日中には調査隊がつくはずだからそれの結果待ちね。」
コレキヨ「やっぱそうなるか。」
コレキヨは小さくため息をついた。

リリーたちを乗せた飛空艇は、予定よりも早く、昼前にカラコム鉱山に到着した。
結局、博士号を持つ者で搭乗したのはリリーだけだった。
今回の調査に役に立ちそうなのは、地学か生物学、もしくは魔法学といったところだが、
地学専門のリリー以外に予定のあいている者は、数学や経済専門の博士しかいなかった。
その代わり、優秀な学生を多目に選出し、補うことにした。

飛空艇の中ですでに予定は立ててあったため、到着と同時に作業は始まった。
坑道へは入れないため、主に周辺の空気や鉱物を採取し、
それを分析にかけるのである。
分析器は乗ってきた飛空艇に設置されている。

唯一の博士であるため、調査隊の責任者となったリリーは、
学生達に作業の指示をした後、辺りの建物をきょろきょろと見回した。
リチャードたちがテントなどをはった形跡がないため、
周囲の宿屋のうちどれかに泊まったのだろうと考え、
そこにおいてあるはずの荷物を取ってこようと思ったのである。

リリーは、いくつもある宿屋のうちから、比較的きれいなものから順に見て回る。
その中で、坑道に一番近い建物の中にそれはあった。
リリーは、人目見た瞬間、妙な違和感を覚えた。
リチャードは几帳面な性格で、必要の無い物はきちんと片付けておく人だ。
だが、ここにある荷物は妙に散らかっている。
使いっぱなしというよりは、何かを探した後のような散らかり方だ。

不審に思ったリリーは、荷物を調べてみた。
すると、あるはずの研究ノートがどこにも見当たらない。
ここに立ち寄った人間は、アートン将軍たちだけのはずだから、
多分アートン将軍が持っていったのだろう。

と、そこでリリーはあるアイデアを思いついた。
アイデアというよりは一種のこじ付けではあるが、
これで、愛しのリチャードに会いに行く口実ができた。

リリーは早速飛空艇に向かい、操縦士たちにこう伝えた。
リリー「調査のため、リチャード博士一行の記録ノートが必要なのですが…」
リリーは言いにくそうな演技をした。
操縦士「はい?いかがいたしましたか?」
リリー「どうやら、アートン将軍が所持しているようなのです。」
操縦士「はぁ。では、フロントコースとへ向かいましょうか?」
リリーはものすごくうれしそうな顔で言う。
リリー「お願いできますか?」
操縦士「はい。では、すぐ発ちましょう。今からなら昼過ぎには到着しますから。」

こうして、リリーを乗せた飛空艇はフロントコースとへと飛び立った。

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