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セラフィック・ブリーズ 第七話・光 ファイは、妙な明るさを感じて目が覚めた。 起きた瞬間はもう朝かと思ったが、窓の外に広がる風景は満天の星空で、 月の形と位置からも、まだ真夜中だということがわかる。 明るいとは言っても、強さはそれほどでもない。せいぜいランプ程度であろう。 ただ、ランプと違って、一箇所からの光ではなく、周囲全体、 言うなれば、空気の分子一つ一つが光を発している風で、 そのためか、とても明るく感じる。 思い起こしてみれば、さっきリチャードのノートを読んでいたときも、 いつのまにか暗くなっていたにもかかわらず、明かりもともさずに読んでいた。 しかし、今周りを見渡してみると、文字が読めるほどの明るさではない。 というより、普通の夜の暗さである。 なんとも不思議な現象ではあるが、原因などはまったく見当もつかない。 リチャード達もこの現象に気づいていたか、 コレキヨなら何かわかるのではないかなどと考えながら、 再び眠りに入った。 次の日の朝、目を覚ましたファイはそそくさと帰り支度をはじめた。 予定では夕方までいるつもりだったが、夜のことが気になり、帰ることにした。 とりあえず、例の学生に尋ねようと思ったのである。 もしかしたら、あの現象がリチャード達の事故と関係があるかもしれないので、 ここに留まるのはぞっとしないというのもある。 とにかく今日は、昨日より暖かくて、 それが何よりの救いだと思いながら、フロントコーストへ向けて飛び立った。 それから数時間後のフロントコースト。 コレキヨは学生の採血を行っていた。 コレキヨ「…はい、手開いて力を抜いて。じゃあ、しばらく押さえてて。」 学生「あ、それは私がやりますよ。私の血液ですし。」 コレキヨ「そう?じゃ昨日教えたとおりに。僕はリチャード達やってくるから。」 と、いったん診察室を出掛かったコレキヨだが、急に振り向いて言った。 コレキヨ「あ、ずるはするなよ。ジョー君。」 ジョー(学生)「ええ。もちろんですよ。」 こんどこそコレキヨは病室へ向かう。 コレキヨ「さぁ、ちょっと血を採らせてもらうよ。どう?調子は?」 リチャード「最悪だな。体が動かん。」 コレキヨ「そりゃそうだ。動くほうがおかしいもん。で、君は?」 学生「おかげさまで、結構よくなりました。」 昨日の昼過ぎのことである。 コレキヨ「ここでね、それを0.2mol。で、沈殿してきたら抗体の反応あり、と。」 ジョー「なるほど。多いとどうなります?」 コレキヨ「多過ぎるとね、さらに反応して分解するんだ。少ないと反応しないし。」 ジョー「わかりました。0.2molですね。」 コレキヨ「そういや、君名前聞いてなかったね。」 ジョー「ジョウェル・スミスと申します。ジョーと呼んでください。」 などと、雑談を交えながら検査の方法を教えていると、 なんの前触れもなくアートンがやってきた。 アートン「二人はどうなった?」 コレキヨ「依然として意識はありませんが、容態は安定していますよ。」 アートン「そうか。…ん?ヤツの姿が見えないが?」 コレキヨはおもわず小さい声で「来た」と言ってしまった。 朝、ファイが出発した後から、この状況を想定して色々言い訳を考えていた。 考えてはいたが、いいものがまったく浮かばない。 出かけたと答えてもいいが、出かける理由といえばカラコム鉱山に行くことしかないため、 そんなことを言ってしまってはやぶへびである。 しかたがないので、散歩に行ったと言おうと思ったときである。 病室の方で、声が聞こえた。 全員で慌てて病室に入ると、もう一人の学生が寝たままではあるが目をあけている。 コレキヨは、二重にほっとした。 これで、あとはリチャードだけだし、言い訳を考える必要もなくなったからである。 コレキヨ「しゃべれるかい?」 学生は黙ってうなづく。 コレキヨ「16584403かける945237は?」 学生「15676191338511。」 コレキヨはそろばんを取り出して確かめる。 わざと難しくして「答えられないなら休んでいろ」というつもりだったのだが、 でたらめに言ったものを答えられてしまって、ちょっとだけあせった。 とりあえず、脈と血圧は正常なため、 点滴を通常のものに切り替えるための準備をはじめる。 あわただしく準備をしている中、ふとした瞬間にコレキヨは背後に気配を感じた。 読み物コーナーへ |