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セラフィック・ブリーズ 第五話・魔法の結晶

飛空艇は、魔法で浮かんでいる。
とは言っても、飛空艇のように重いものを魔力だけで浮かすには、
何十人もの術師を集めなければならない。
高名な術師でさえ、自分より大きな岩を浮かすのは困難なのである。

そこで、少ない魔力でも浮くようにと、飛空艇にはプロペラがついている。
プロペラを回すだけならそんなに魔力は必要ない。
磁石などで摩擦を減らし、魔力をさらに使わなくてすむような工夫もされているため、
普通の術師であれば、飛空艇を浮かすのはとても簡単な作業だ。

しかし、術師の仕事は飛空艇を浮かすことではない。
以前は、運転要因として術師を数名乗せての航行が一般的であったが、
ただでさえやりたがる術師が少ないのに、飛空艇の需要は増え、
思うような運行ができなくなっていた。

最近では、魔留石(まりゅうせき)というものでプロペラを回している。
魔留石は、魔法を封じ込めることのできる3つ1組の道具で、
昔から子供や老人などの魔力の弱い人向けの魔除けとして使われていた。
3つの魔留石を一直線に並べて魔法をかけると、その魔法を吸収・保持し、
正三角形に並び替えると、吸収した魔法を放出するのである。
魔法効果が長時間持続する代わりに、魔力自体は弱くなるという特徴も持っている。

ファイがポケットから取り出したものは、その魔留石にとてもよく似ている。
ファイ「これ、なんだかわかる?」
コレキヨ「魔留石?でもなんか違うよね。1つしかないし。」
ファイ「そ。これは魔留石じゃなくて、魔集石っていうの。ちなみに名付け親はあたし。」
コレキヨ「マシュウセキ?魔力を集める石?」
ファイ「そのとーり。」
コレキヨ「集めるってどこから?」

ファイ「そこが肝心なところ。まずね、結論から言うと自然界の動くものからなんだけど。」
コレキヨ「ん?よくわかんない。動植物から集めるってこと?」
ファイ「ううん。そうじゃなくて、水とか風、それから太陽も大地も、
    意思はないけど動いてるじゃない。」
コレキヨ「ああ。そう言えば、それらの動くエネルギーって
    動植物なんかとは比べ物にならないよね。」
ファイ「そう。その莫大なエネルギーを少しずつ集めるの。そうするとねぇ…。」
コレキヨ「どうなるの!?」
ファイ「やっぱ、やめたっ。完成してからのお楽しみってことで。」
コレキヨ「…はぁ。またか。」

コレキヨはファイに無理やり診療所に押し込められた。
確かに見たい気持ちも強かったが、いずれわかることだし、
もともとのんびりやの性格もあって、素直に従うことにした。

それよりも、例の三人が気になったので、コレキヨは病室の様子を見ることにした。
病室を覗くと、一見変わったようには見えなかった。
しかし、よく見てみると、意識を取り戻した彼の姿がないのである。

のんびりやのコレキヨもさすがにあわてて、
何か手がかりはないかと病室に入ろうとしたときである。
背後で物音がするのを聞いた。
コレキヨはハッとして後ろを振り向くと、病室の正面にあるトイレのドアが開いた。

学生「あ、おはようございます。」
コレキヨはホッとした。
いなくなったのではなくよかったという気持ちもあるが、
同時に、出歩けるまで回復していることにも安心感を覚えた。
顔色もよさそうである。

コレキヨ「どうだい?調子は?」
学生「ええ、すっかりよくなりました。」
コレキヨ「それはよかった。あとは、残りの二人の回復を待つだけか。」
学生「ええ、そうですね。なにか私にも手伝えませんかね?」
コレキヨ「大丈夫かい?それなら頼もうかな?」

王立大学の入学試験は、約一年かけて行われる。
その内容は過酷なもので、
一年ですべての学問の基礎をみっちり教え込み、最終試験を行う。
もし、最終試験で1点でも落とした場合、入学することはできず、
試験自体二度と受けることができないのである。
他の大学を受けるために、王立大学の入学試験で勉強するという人もいるほどだ。
そんな難関を通り抜けたのだから、実力だけで言えば、
他の大学の博士よりも上かもしれない。
つまり、王立大学の学生であれば、医者の助手くらい朝飯前なのだ。

コレキヨ「とりあえず、症状の軽いこの子は3号にブドウ糖液で点滴ね。」
学生「はい。200mlでいいですね。」
コレキヨ「うん。それで、リチャードの方は高カロリー輸液に様子を見ながらこの栄養剤を。
    あ、あと採血。」
学生「はい。」
コレキヨ「で、白血球数と、あと抗体をしらべといて。」

そんなこんなで昼も近くなったころ、
診療所にアートンがやってきた。

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