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セラフィック・ブリーズ 第二話・ドクターコレキヨ フロントコーストは、真っ白い砂浜が名物のリゾート地だ。 そのため、夏には大勢の人でごった返すが、特に暖かい地方でもないので、 シーズンオフには閑散としてしまう。 今は、夏にはまだまだ早い季節。住人といえば、別荘やホテルの管理人しかいない。 ファイ達を乗せた飛空艇は、シーズン中には国営飛空艇線が発着する空港に停泊した。 アートンと捜索隊員達は、リチャード達三人を別々の担架に乗せ、 ファイの案内する後をついていく。 いかにも金持ちが建てたような別荘や、純白の清潔感あふれるホテルが建ち並ぶ中、 明らかに風景に溶け込んでいない、民家のような家が一軒。 しかし、診療所と書かれた看板が掲げてあることから、民家ではなく診療所なのだろう。 開けっ放しになっている入り口に、ファイは何のためらいもなしに入って行った。 ファイ「おーい。コレキヨー。急患だぞー。」 ファイが大声でそう言うと、姿は見せないが、奥のほうで声がした。 コレキヨ?「おー。その声はファイかー。 とりあえず患者をこっちに運んできてくれよー。」 ファイ「わかったー。…こっちよ。来て。」 と、ファイが奥に入っていくのを、捜索隊員達は担架を担いでついていく。 奥には口をもごもごさせた白衣の若い男性がいた。この男性がコレキヨだろう。 見ると、机の上には食べかけのうどんがある。 コレキヨは、入ってくるファイ達をみて少し驚いた表情をしている。 コレキヨ「げっ。三人か。…ま、いいや。ベッドは余ってるし。」 ファイ「原因不明なのよ。あなたならわかるかと思って。」 コレキヨ「う〜ん。軍隊同伴とはただ事じゃないね。 …あれ?この人、リチャード?」 アートン「リチャード博士を知っているのか?!」 コレキヨ「お、これはこれは将軍様ではないですか。 …知ってるも何も、リチャードとファイと私は幼馴染ですよ。」 さすがのアートンも、これには度肝を抜かれた感じだ。 アートン「本当か?」 ファイ「あれ?言ってなかったっけ?まぁそんなことはどうでもいいじゃない。 それより、コレキヨ。」 コレキヨ「わかってるって。」 そう言うと、コレキヨは手術室のような部屋に三人を運ばせた。 三人を運び込んだ後、隊員達は飛空艇で待機するよう命じられ、診療所を去っていった。 コレキヨ「う〜ん。…これは、カラコム鉱山だね?」 ファイ「へ〜。さすが。」 ファイは一応驚いたような感じだが、アートンは明らかに驚愕している。 コレキヨ「どれくらい鉱山にいたかわかる?」 ファイ「えっとねぇ…。二週間弱かな。」 アートン「12日間だ。そのうち坑道にいた時間は、 予定通りであれば、18時間程度と推測される。」 ファイ「あたしが発見したのは、町の方だし、 リチャードの性格から考えると、それで間違いないでしょ。」 コレキヨ「あ、それなら助かるかも。とりあえず、点滴を打って様子を見るか。」 アートンは飛空艇に戻り、待機していた隊員達に、王都へ報告に戻るように指示した。 アートン「ここへ六名残れ。他のものは王都へ帰還し、 この書状を陛下へお渡しせよ。」 隊員「了解。早急に帰還いたします。」 30分ほど後、準備の整った飛空艇は、アートンと隊員六名を残し飛び立って行った。 アートンと残った隊員達は、コレキヨの診療所に一番近いホテルへ出向いた。 管理人に事情を話し、そこへ宿を確保すると、アートンは診療所へ向かう。 診療所ではファイが夕食をとっていた。 つい先程、うどんを食べていたはずのコレキヨも、また食事をしている。 アートン「宿を確保したがお前はどうするのだ?」 ファイ「へ?あはひ?…ぷは〜。あたし?あたしはここに泊まる。 リチャード達が心配だし、コレキヨの料理も食べれるし。」 たしかに、見たこともない、それでいて美味そうな料理だ。 ただ、ガスバーナーで鉄板を熱していたり、 ビーカーがコップになっていたりするのは食欲を減退させる。 コレキヨ「将軍様も召し上がります?東方の料理でヤキニクって言うんですよ。」 アートン「や、今は結構。また機会があればいただこう。ところで、三人の容態は?」 コレキヨ「ええ、一命は取り留めたってとこですか。油断は禁物ですが。」 アートン「そうか。私はすぐそこの宿で待機しているからなにかあったら教えてくれ。」 そう言って、アートンはホテルへ戻っていった。 コレキヨ「ねぇ、将軍様はファイのこと知らないの?」 ファイ「知らないんじゃない?一応隠してるし。」 コレキヨ「ふ〜ん。相変わらずだね。」 ファイ「あはー。それって誉めてるの?」 コレキヨ「いや、けなしてるの。」 ファイ「ちぇっ。傷つくなぁ。傷ついたお詫びに明日の朝はナットウ出してね。」 コレキヨ「まったく、相変わらずだ。」 ファイ「さって、ごちそーさん。お風呂借りるね。もうほこりまみれ。」 コレキヨ「んあ。ゆっくり入ってきなよ。僕はまだ食べてるから。」 そう言って、ファイが風呂に向かおうとしたとき、病室から唸り声が聞こえてきた。 読み物コーナーへ |